ホーム > 市政情報 > 計画 > 企画調整局の計画・事業等 > 神戸市と大学等との連携の取り組み > 大学発アーバンイノベーション神戸(若手研究者の研究活動経費助成制度) > 2021年度 大学発アーバンイノベーション神戸 採択研究及び研究成果
最終更新日:2024年11月18日
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松村 淳(関西学院大学 社会学部)
3,000千円
現在、世界レベルで循環型社会、脱炭素化社会が目指され、具体的な数値目標が掲げられつつ、経済成長指標に代わって、新たな都市間競争の課題となりつつある。日本の大都市の中でも有数の豊かな自然環境を有する神戸市は、自然環境を積極的に活用した循環型社会を実現できる環境先進都市としての高いポテンシャルを有している。
そうした豊かな自然環境を活かした循環型社会への取り組みとして、神戸市が進めている取り組みとして、ブルーカーボン事業がある。関西学院大学は、学生主体の団体(学生エコ・ボランティア)を組織し、専門家と協働しながら、ブルーカーボン事業についての、広報活動や市民向けの啓発活動を担う。さらに、ブルーカーボン事業は神戸市の里山環境保全事業の一部として位置づけられることから、学生エコ・ボランティアは、ブルーカーボン事業だけではなく、包括的な里山環境保全事業にも目を向け、棚田の再生等のプロジェクトに取り組む。また、こうした活動を持続可能なものにするために、神戸市内の各大学や高等学校で実施できる一般教養科目のカリキュラム開発をすすめる。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、注目を集めるのがバーチャルサイクリング(Virtual Cycling: VC)である。有馬温泉は、2020年にARコース(Rouvy AR)を用いたアジア初となる「有馬-六甲Virtual Ride Race」を開催し、2021年にはサイクリングの拠点施設「Casa Ciclismo」をオープンし、サイクルツーリズムの推進に取り組んでいる。VCの課題は、VRやAR映像を用いてインドアで自転車を漕ぐことにより、通常のインドアサイクリングと比較して、感情や生体にどのような違いがあるのかである。別の課題では、VCを経験したサイクリストが実際のコースを走りたくなるのか、といったバーチャルからリアルへの行動である。
そこで本研究では、有馬-六甲間のARコースを用いて、1)VCの実施が感情および生体に及ぼす影響、2)VC体験による有馬温泉への印象や観光意図に及ぼす効果、3)VCと実際のサイクリングにおける経験価値の差異を検証することを目的とする。
神戸市における人口減少・若者の県外流出に関する地域課題に着目する。その要因のひとつとして、市内の企業とりわけ中小企業に対して「働く場」しての認知度が若者を中心に低いことが考えられる。それは、本来若い世代が求めている企業情報を企業側が発信できていないためであり、特に経営資源の乏しい中小企業では、本来自社の求める人材像が不明確なまま(あるいは思い込みのまま)採用活動を実施するため、人材の獲得・定着が難しいケースが少なくない。そこで本研究では、中小企業における採用力向上を目的とした「採用塾(仮)」のプログラムの開発・検証をおこなう。「採用塾(仮)」はセミナーとワークショップを組合わせた形式を採用する。
なお、この採用塾は2018年から富山大学地域連携推進機構がCOC+事業の一環として実施した「採用イノベーションスクール」のノウハウ・技術移転を試みるものであり、富山大学地域連携推進機構はこのプロジェクトを含め評価Sの高い成果をあげている。このノウハウを武庫川女子大学経営学部に移転し、神戸の地域性に即した中小企業の課題解決に資するプロジェクトを開発する。また単に知の移転のみならず、本学の強みを活かした女性雇用の創出を加えた実証実験をする。
全国的に放課後等デイサービス事業所の不祥事が相次いでいるが神戸市内においても例外ではなく、2021年度より外部専門家による巡回指導が開始されている。しかしながら、根本的な背景として発達障害児の感情調整の問題や問題行動に伴う対応の難しさと、事業所職員がそれらに対応する上で必要な専門性が不足しているという現状がある。また放課後等デイサービス事業所は家族との連携の困難さも課題として挙げており、家族支援に関する研修ニーズをもっている。そこで、神戸市内の放課後等デイサービス事業所の発達支援や家族支援に関する支援力向上を目的に、放課後等デイサービス事業所と発達障害児の親を対象とした実態調査(研究1、2)を行い、その調査結果と申請者らの研究知見を基に実践型研修プログラムの開発と効果検証を試みる(研究3)。これらの研究を通して、オンラインを活用した神戸市内の放課後等デイサービスの支援力を高める持続的な研修リソースの構築とその普及を試みていく。
神戸市では生物多様性条例が施行され、生物多様性の保全が政策的に進められているが、多様性を保全することで生態系から得られる利益(生態系サービス)だけでなく、有害鳥獣による農作物被害や人的被害の増加、ダニ媒介感染症などの増加といった不利益(生態系ディスサービス)も増加することが懸念される。都市域と自然・二次的自然生態系が隣接する神戸市では、これまでにも外来種であるアライグマ、在来種であるイノシシによる被害などが発生しており、市民にとっては、生物多様性を保全することの意義を理解しづらい可能性がある。本研究では、アンケート調査によって生物多様性保全とそれにともなう潜在的な問題に関する市民の意識を探るとともに、環境DNA分析を利用した市民参加型の生物多様性調査手法を開発する。それを試行することで手法の有効性や市民の生態系サービス(ディスサービス)に対する評価の変化も検証し、市民の理解を得ながら多様性を守る施策へとつなげるための情報を提供する。
神戸市全体の人口以上に農業人口の高齢化が進行する中、ITを利用した農業スマート化や高付加価値を目指す6次産業化を行うようなイノベーションは急務であるが、簡単に推進できるものではない。また、複数のイノベーションの選択肢がある中で、どれを選ぶかという決定要因は、あまり研究されていない。本研究では、神戸市経済観光局農政計画課と協力し、神戸市の農家にアンケートを取り、農家がIT導入や6次産業を選択する要因やそれらを阻む要因をアンケートデータの計量的解析により解明する。特に、年齢、経験、健康状態等の個々人の社会・経済的状況や経済学で重要な危険回避、経路依存性等の要因が影響を与えると仮説を立て、それらの仮説が支持されるか、また、異なる種類のイノベーションで結果がどう異なるかを明らかにする。その結果に基づき、神戸市の農業に関し、どのようなイノベーションに重点を置き、どのように推進していくべきか、提案する。
国内では、深刻な少子高齢化が進んでおり、労働力不足が危惧されている。神戸においても同様の問題を抱えており、とりわけ介護職の分野では人材不足が深刻化していることから、さらなる外国人介護人材の参入が期待されている。そうした中、2019年4月から入国管理法が改正され、「特定技能」資格での外国人労働者の導入が始まり、介護人材の確保の推進が期待される。一方で、外国人が日本国内の介護現場で労働する際、「日本語習得」という壁に当たることになる。生活に適応するための日本語はもちろん、就労現場でのコミュニケーション能力も求められるため、習得は容易ではない。本研究では、外国人介護人材を受け入れるにあたり、大きな問題の一つとなっている日本語力に関して、日本語教育の観点から検証し、外国人介護人材育成プログラムの開発を目指す。また、国際都市である神戸市の介護施設が、海外から継続的に人材を受け入れられる枠組みを提案する。
神戸市は現在、高齢者率28.5%、高齢かつ認知症の方が4万人、予備軍が4万人と推計され、廃棄物分野で課題が顕在化している。日本の資源循環の成功は、住民による高度な分別排出行動によるが、超高齢社会では分別排出行動の限界が見えている。一方、国レベルではプラスチック資源循環の拡大・高度化が求められる。
本研究では、持続可能な資源循環制度を確立する事を目指し、高齢化、孤独問題も視野に入れ現状の定量的把握、仮説構築と検証を行う。目的達成のため産官学民連携が必須であり、食品ロスダイアリー事業で構築したネットワークを中核として推進する。
上記の課題を解決するために、神戸市民の分別排出行動と意識を分析し、神戸市内の小売店、並びに情報通信事業者、メーカーと連携し、アプリを利用して分解能の高いデータを収集し、精度の高い分別排出行動を促進する方法を見出す。なお、この種のデータは世界的にも見当たらず、貴重な情報となる。
今年度開始予定の拠点回収の実施を貴重な機会として活用し、地域コミュニティの持続性や管理の可能性についても検証する。これは神戸2025ビジョンにおける基本目標7であり、地域コミュニティの持続性をごみの排出行動と結び、地域の安全や高齢者の見守りにつながるようデザインしていきたい。
本研究では、地域デジタル通貨およびポイントを通じた地域活性化、市民生活のデジタル化(DX化)について実証分析をもとに研究し、今後の神戸市をはじめとする地域に対しての政策的、実務的な示唆を提供することを目的とする。地域デジタル通貨は民間事業者が提供するもの(ICOCA、LINEPayやPaypayなど)が存在し、地域ポイントはプレミアム商品券がその性質を帯びているが、前者については、決済手段のDX化は実現しているもののそれによる地域活性化への貢献は未知数であり、後者については地域への効果は一過性であり、また、持続させるための原資をどうするかという問題が出てくる。その点、地域デジタル通貨およびポイントは域内人口の地域内での購買や地域活動へのコミットメントを引き出す可能性があり、本研究では以下で触れる神戸市の抱える各課題にもっとも効果のある地域デジタル通貨およびポイントの設計について検討していく。
本研究では、「Society5.0時代のWithコロナ社会に対応した神戸都心・三宮地区におけるICTエリアマネジメント」を研究テーマとする。
神戸都心・三宮地区の人流センサ(設置済)を活用して、都心の疎密情報を広く配信し、安心安全な外出を支援すること、また、神戸都心を訪れた人に対して、利用可能な飲食店舗の情報(メニュー、位置、混雑状況等)とともに、神戸市三宮センター街一丁目等の公共空間における飲食スポットを紹介することにより、密を避けて飲食する機会を増やすことで、街の賑わい活性化を促進し、安心安全と経済の活性化の両立を図る。
具体的には、情報プラットフォーム及び各種サービスのためのシステム構築を行い、データ収集から人流予測、飲食の需要予測、飲食店舗へのデータ提供、公共空間の飲食スポットへの出前サービスの実証を行う。
本実証は神戸市の都心三宮再整備課、三宮センター街一丁目商店街振興組合、078KOBE実行委員会、アーバンデザインセンター神戸(UDC078)、地域ICT推進協議会(COPLI)他との連携により実施し、実証後も早期の社会実装に向けて協調して事業推進していく予定である。